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「ふるさと住民(関係人口)」は移住の3歩手前。山形の地域・企業と関係人口をつなぐ「農耕型」の土壌づくり

コーディネーターの田中です。

2026年4月から、「ふるさと住民登録制度」がスタートします。これは、居住地以外の自治体に住民として登録し、観光以上・定住未満の「関係人口」として地域活性化に貢献する仕組みです。

参考:ふるさと住民登録制度の検討状況について(総務省)

参考:ふるさと住民登録制度の総務省キーパーソンが語る制度設計と活用可能性

参考:「住んでいない住民」が地域を変える~新制度「ふるさと住民登録制度」の衝撃と可能性

私は、この制度が始まることを歓迎しています。

なぜなら、これまでずっと感じてきた「もったいない」を解消する大きなきっかけになると期待しているからです。山形を想う熱い人はたくさんいる。けれど、その想いが可視化されず、地域側のニーズとうまく噛み合わないまま埋もれてしまう……。そんなもどかしい状況を感じてきたからです。

この制度が始まることを機に、地域側・外側双方の理解が深まり、もっと活発な交流が生まれるといいなと思っています。

山形と関係人口が幸せにつながるためには何が必要か。

正解は一つではないかもしれませんが、、現場で感じてきたことを通して「私はこう思う」という視点を整理しました。


山形県にゆかりがある「関係人口」の熱量と、ウェルカムな地域

まずはおさらいしておくと、関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、 地域と多様に関わる人々を指す言葉。

そんな人っているの?と思う方ももしかしたらいるかも知れませんが、山形県外に住む「山形県出身者」の約6割(59.2%)が「自分のできることで地域を手伝いたい」と回答しており、ゆかりのない人と比べて地域貢献への非常に高い意欲を持っています。

調査によると、若者が地域活動に参加する上で大事にしていることの第1位は「興味関心のあることに携われる(67.0%)」、第2位は「『ありがとう』『助かった』と言ってもらえること(38.7%)」でした。つまり、関係人口・若者は単に「暇をつぶしたい」わけでも「お金が欲しい」わけでもなく、自分の興味を活かして、誰かの役に立っているという「実感(役割)」を求めているのです。

でも『田舎は閉鎖的』だし、よそ者は受け付けないんじゃないの? って思った方。

それは、ステレオタイプな考えと断言します。

地域コミュニティ(町内会など)の代表者のうち6割以上が、関係人口が地域の活動に参画することを肯定的に捉えています(「大歓迎する(23.6%)」「参画してほしいが、気になる点もある(38.5%)」。地域側は決してよそ者を拒絶しておらず、「来てほしい」と願っています。

残りの4割も「そもそも、関係人口って何?よくわからない」が多数で、「参画してほしくない」6.8%の中の具体的な意見としては「自分の地域のことは自分たちでやらねど」という声がありました。


関係人口は「役割」を担いたいが関わり方がわからない

地域の「ウェムカム」という本音と、若者の「役に立ちたい」想いがこれほど明確にあるのに、私の周囲では、今もなお、「山形に貢献したいが、関わり方がわからない」という県外在住の山形県出身者の声を聞きます。

なぜそんな声が絶えないのか。

関係人口側が、地域に関わろうとする時って、いきなり役場や地域に突撃して「関わりたいです!」って行く人って稀です。じゃあどうするかっていうと、マッチングサイトとかを見て案件に応募したりします。就職・転職活動の動きに近いイメージでしょうか。

地域と関係人口をマッチングするサービス等は沢山あります。

参考:最新の移住と関係人口を総まとめ!「地域系サービス・メディアカオスマップ2024年度版」を公開しました!

これほどサービスがあるのに、「山形に貢献したいが、関わり方がわからない」という県外在住の山形県出身者が依然としているのを考えると、考えられることは以下です。

1・地域への入り方がわからない

 ーたくさんあるが故に、分散してしまう、掲載しているサービスのことを知らない。というのもあるかも知れない。

 ー山形県内側から「こういうこと、やらない?」という具体的なお誘い(案件)が圧倒的に少ない。ある地方特化型副業マッチングサイトで検索したら、山形県の案件が「1件」でした。

2・活動内容がわからない

 ー案件がないので、それに伴い、内容もわからない

3・何を求めているのか分からない


山形から関係人口向け案件が出てきずらい理由

じゃ地域側からなんで案件が出てこないのかと言ったら、この2つがあると思っています。

1・「課題の言語化/案件切り出し」の壁

「正社員募集!」なら求人票作成に比較的慣れています。しかし、現場の「とにかく人手が足りない」「何とかしたい」という切実な困りごとを、「週5時間の副業、リモート可、報酬◯円」といった外部の人が手伝いやすい「案件」の形に切り出すのは、実は高度なスキルと余裕が必要です。そのため、多くの「困りごと」が埋もれたままになっているのではないでしょうか。

2・「人間関係・コミュニケーション」の壁

知らない人に大事な内情をさらけ出すのは怖いものです。特に地域コミュニティや地場企業は、都会的な「結果が出ればドライに割り切る」という関係性が馴染みにくい人も多く、信頼の貯金がない相手には二の足を踏んでしまいます。(上記のアンケートの通り、基本ウェルカムなんだが、不安になる)

先ほどの調査では、地域側が抱く「関係人口が地域活動に参画する上での心配ごと」のトップは「地域内の人と上手くやっていけるか(1位)」、次いで「相手が考えていることを理解できるか(2位)」でした。

コミュニケーションへの不安を抱えているのは関係人口側も一緒で、お互いにモジモジしているイメージが浮かびます。

あと、もしかしたらあるかも知れないなと思うのが、「覚悟の温度差」。

例えば、365日地域の責任を背負っているリーダーや地域で暮らすことの大変さ(例えば雪かき)もまるっと受け入れている人すれば、たまに来て楽しい部分だけを体験する関係人口は「いいとこ取り」に見えてしまうことがあります。私自身、山形出身で月1回帰省して活動していますが、先日も「いいとこ取り」と言われました(そこにどんな感情が含まれているかは分かりません。ただ、他にも40代の経営者とお話しして似たようなことを感じたことがあり、複数あるということはそういうことなのかな、と思ったりします)

しかし、この「モヤモヤ」の裏側には、地域側の切実な期待も隠されているのではないかとも思います。

調査によると、地域コミュニティが関係人口に参画してほしい活動の第1位は「お祭り・盆踊り」でした。

単純な作業効率だけを求めるなら、他にも大変な仕事はたくさんあるのに、ここから読み取れるのは、地域は単なる労働力が欲しいのではなく、「もっと一緒に楽しみたい、混ざってほしい」という情緒的な繋がりや相互理解を求めている、ということではないでしょうか。


「役割」を担いたい関係人口が地域へスムーズに入っていくための4つの視点

山形の地域と関係人口がもっとつながっていくためには3つのポイントが必要だと私たちは考えています。

1. ギャップを埋める『コーディネーター(伴走者)』の存在

コーディネーターは、仕組みだけでは埋められない、人間関係の「ラストワンマイル」を埋める専門職です。

具体的には、地域・企業の困りごとを、外の人が自分事として捉えられる形に「言語化」し、案件として切り出すことから始まります。さらに、双方が抱く「上手くやっていけるか」という不安を解消するために、クッション役として期待値の調整を行い、活動後もその関係が途切れないよう「事後の関係維持」をサポートする役割です。

実は、私が以前参加した東北経済産業局のワーキンググループ(関係人口創出に関する調査事業)でも、この重要性が強く議論されました。全国や東北各県の有識者が集まったその場では、「外部人材が活躍している地域には、コーディネーターが介在している」ということでした。

コーディネーターはインフラであり、地域に深く関わる担い手を育てるための「投資」です。

2. 「未完成の余白」で対等な「ナナメの関係」で、自分ごと化するきっかけを作る

地域が人を惹きつけようとするとき、つい「整った魅力」をアピールしがちです。しかし、条件の良さや完成された魅力だけで勝負しようとすると、終わりのない消耗戦になってしまいます。

また、ある県内企業の経営者さんは、マッチングサイトで副業人材と戦略を作ったものの、「戦略はできたが、それを実行する人が社内にいない」とこぼしていました。地方の中小企業の多くは、あまり余裕がないのも影響しているのかなと感じます。

関係人口の若者が求めているのは、「自分が役に立っている」という実感。

「課題解決プロジェクト」でも良いけどそれだけじゃなくて、「この草刈り手伝って欲しいんだ」「お祭りの準備、若手が一人でもいてくれたら助かるんだ」 そんな現場の「未完成の余白」でも「私の出番がある」と感じられる隙間があります。「お手伝い」が、若者の自己重要感のスイッチを入れる入り口になります。

そこで、利害関係のない少し先の先輩(ナナメの関係)との対話(例えば、作業中や作業後の直会で普段親や地元の友達とは話さない地域の話や人生の話になったり)があることで、地域への見え方が変わってきたり、ネットにはない地域のリアルや生身の人間に触れる中で、「山形でこんなこともできるかも知れない」と、自分にできることの解像度が少しずつ上がっていきます。

「あー、今日楽しかったな、またあの人に会いたいな」と思えるのって大事ですね。

3. 「農耕型のアプローチ」で、時間をかけて関係を耕す

関係人口施策の本質は「作業の穴埋め」ではなく、「人間関係の構築そのもの」だと思います。

「農耕型」とは、わたしたちが提唱し実践している体質改善を促す漢方薬のようなアプローチ「農耕型エンゲージメントモデル」から来ているのですが、要は、対話して人間関係を積み上げていくという考え方です。

「農耕型エンゲージメントモデル」では、土壌(個人を受け入れる側のコミュニティ(組織や地域)の風土)を整え、自社の「らしさ」を言語化し、ナナメの関係を通じて信頼を積み上げていく考え方です。最終的には、社員や住民などの中の人から自然と「うちの会社・地域いいよ。一緒に働こうよ・暮らそうよ。」という声が周囲の人に掛けられる『リファラル(採用)』が生まれる状態を目指します。

参考:「獲得」ではなく「納得」を。組織・地域の未来を対話で耕す「農耕型エンゲージメントモデル」

マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱した「成功の循環モデル」では、全ての成果はまず「関係の質」を高めることから始まるとされています。(互いを尊重し合う関係が築かれると「思考の質」が向上し、それが自発的な「行動の質」へ、そして「結果の質」へと繋がっていく)

だからこそ、最初から高い成果を求めるのではなく、まずは「相手を知り、理解しながら、やれることから進める」という時間軸を大切にします。

現場で共に汗を流す「手伝い」から始めて信頼という土壌を耕し、段々と「何かあったら頼れる仲間」になっていく。

具体的なプロセス例としては、以下のようなステップを私たちは大切にしています。

Step 1:共感(参画) 完成された地域の魅力を見せるのではなく、地域の「リアルな課題」と「人柄」を公開し、「この人たちの力になりたい」という初期動機を作ります。

Step 2:共汗(信頼) 現場での草刈りなど、地味だけど地域を維持するために必要な作業を通じて共に汗を流し、「よそ者」から「汗をかいた仲間」へと昇格します。

Step 3:共創(役割) 作業後も「じゃ!」で終わらせず、オンライン等で再会。築いた信頼をベースに、離れていても当事者としての役割(プロボノ・副業など)を維持します。

Step 4:循環(発信) 参加した若者自身が、イベント等で自分の活動事例を発信し、新たな関係人口を呼ぶ「伝道師」となります。

Step 5:多面的な影響(成果) 活動がメディア等で可視化されることで若者の自己重要感が高まり、地域側も「顔が見える安心」を得ることで、次の活動への信頼貯金が生まれます。

4・誇りと愛着を育む、関係人口の「役割と居場所」

「余白」や「対話」の先に、「役割と居場所」が感じられれば、心の距離は一気に近づきます。「またあの人に会いたい」「またあの場所へ行きたい」という再訪の動機が生まれますし、山形への移住UIターンを諦めていた・迷っていた・これまで考えてこなかった人も、移住という選択肢を「3歩先」から「1歩手前」へと引き寄せていくことに近づけます。

ただ、この関係を「継続」させるには、地域側と個人側、双方の歩み寄りが必要です。

地域側ができること:役割の「可視化」

「よそ者」として遠巻きにお客さん扱いするのではなく、地域の一員として認め、頼りにして欲しいです。例えば、活動実績に応じて「山形アンバサダー」のような称号を付与したり、SNS発信やイベント運営といった明確な役割を公式に認めたりする仕組みです。「地域の一員」としての居場所がもらえると、嬉しいです。

個人側ができること:信頼の「貯金」

一方で、個人側にも「地域と長く付き合うための作法」があります。いきなり大きな変革を狙うのではなく、小さな実績を積むこと。自分からの「戦略的なGive」で信頼という貯金を増やすこと。都会のスピード感に縛られず、自分なりの「納得感(落としどころ)」を見つけて、スローな時間軸を楽しむ余裕を持つこと等です。


関係人口は移住の「3歩手前」

調査では、地域の方々の中には「一過性のお手伝いではあまり意味がない。やはり実際に住んでくれる居住者(定住人口)が増えてほしい」という声もありました。自治体の中にも、関係人口には興味がない(移住してくれる人が欲しい)と考えているところもあると思います。

でも、関係人口と移住はつながっています。

ネットの情報(二次情報)だけで、人生を賭けた「移住」の決断はできません。現地での体験や、そこに住む人たちとの対話といった「一次情報」を重ね、少しずつ地域での役割を持っていく。この「助走期間」があるからこそ、結果としてミスマッチのない、定着率の高いUIターンへと地続きで繋がっていきます。

以前、上記の3つのポイントを押さえたプログラム(移住UIターン支援の文脈でしたが、地域の活動を手伝ったり、自分が地域でやってみたいことの下調べ等をするという内容)を鶴岡市などで実施しましたが、参加者の約3割が移住しています。


正解のない問いだからこそ、共に悩み、共に耕し続けたい

正直に申し上げて、私も「山形と関係人口が幸せにつながるための完璧な正解」はまだわかりません。

ただ、私自身が15年前に関係人口として地域に関わり、まさにこの記事で書いたようなプロセスを経て「いつかUターンしたい」と心から思えるようになりました。今はまだその機会を探っている最中ではありますが、それでも「山形との距離」はじりじりと、確実に近づき続けています。

現場で感じるのは、山形を想う「外の人」の熱量は本物であり、地域側の「ウェルカム」という本音もまた、本物だということです。

2026年から始まる「ふるさと住民登録制度」は、その2つの熱量を結びつけるための、巨大なチャンスです。

  • コーディネーターが間に入り、
  • 未完成の余白で出番を作り、
  • 農耕型のアプローチで信頼を積み上げ、
  • 役割と居場所を分かち合う。

これは、非常に地味で手間がかかるプロセスです。でも、このプロセスを通して「個人の納得」が育まれます。

関係人口・移住・UIターン就職転職においては、この「個人の納得」の積み重ねが大切です。

「個人が「自分の人生これでいい」と思える納得したキャリア選択ができる企業や地域に人が集う。その関係性が、地域・企業の存続と繁栄につながる。」

そう私たちは信じています。

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